容疑者はヒトリ。
第一章~発生~

10月2日午後6時頃、徳田洋子は近藤サヤカの家のドアを叩いていた。


『サヤカ?早くあけなさいよー。まさか約束を忘れた、なんてことはないでしょうね?』


だが部屋から返事は無かった。


『もう…鍵はかかってるし、最悪』


洋子は携帯電話を取り出しサヤカの番号にかけた。

すると部屋から、サヤカの携帯電話のものであろう、着信音が聞こえた。


洋子は嫌な予感がした。本当になんとなく、だが。



洋子はすぐにアパートを3階から1階に降り
管理人室の窓を叩いた。


『おばさん!おばさん!洋子です!サヤカの部屋の鍵をください!』


すると、のっそりと眠気まなこの目をしたこのアパートの管理人、室井孝子が顔を出した。



『あら洋子ちゃん。サヤカちゃんの部屋がどうしたの?あの子もしかしてまた鍵を無くして……』




『違います!今日家で会う約束をしていたのに、サヤカの返事がなくて…でも、でも携帯はあって…』



洋子の焦り様は孝子の眠気を覚ました。



『返事がないって…きっとサヤカちゃんのことだから、約束を忘れて携帯を持つのも忘れてきっとどこかに…』

『そうですよね…あの子のことだから…』





サヤカは生粋のおてんばというものである。
よく転ぶしよく忘れるし

そういう人なのだ、洋子のただひとりの親友は。


こんなことを言い合いながらも
ふたりの意見はまとまっていた。



『行ってみましょう。一応、だからね。』


『はい。』
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