擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~
「香苗。行こうか」
結城君が柏木さんに声をかけると、跳ねるように立ち上がって頷いた。
「そうだね。演劇部に案内するね、雅ちゃん」
「だから」
「芹沢先生、行こ」
柏木さんは私が指摘する前に、無邪気に笑って外に出るよう促した。
放課後の廊下は昼間よりも人の気配がひっそりと静まり、新鮮な気持ちになる。
どこからか聞こえてくる、管楽器の音が空気を震わせて私の耳にも微かに届く。
「知らなかったなー。服作りが得意だったなんて。何で数学の先生になったの?」
結城君が先頭を歩き、私と柏木さんがその後ろを並んでついて行く。
柏木さんは両手を後ろで組みながら、時折スキップを加えて弾む様に進んで行く。
「数学が小さい頃から好きだったの。それに、高校時代に出会った先生がとても素敵な人だった」