擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~
部員と話が盛り上がってしまった柏木さんとは別れ、必要な物を抱えながら、演劇部の部室を後にした。
「結構な量だね、それ」
周りに誰もいないからか、本性の方が出てきた結城君に対して私は密かに身構える。
「間に合う?」
「間に合わせるよ。絶対に」
衣装が間に合わなかったらあの子達の舞台が成立しない。
だから、やるしかない。
「教師って意外と忙しいんだよね?」
「そうだけど、それがどうしたの?」
「こんなの引き受けたら負荷が重くなるだけだし、先生の利益は1つも無いじゃん?良く引き受けたよね」
私を上手く操って承諾させたのは結城君なのに、まるで他人事みたいだ。
「利益があるとか無いとかじゃないんだよ。あの子達を見たら、助けたい、ってただ思ったの」
「論理的じゃないね。数学教師なのに」
「人間は数式とは違う。正しい解なんて、求められるわけがない」
「だから、厄介なんだよ。曖昧過ぎてイライラする時がある」
顔をしかめた結城君を見て、口元が緩んだ。
いつでも冷静で大人びている、高校生離れしたような落ち着いた佇まいの結城君。
そんな結城君でも思春期の男子高校生らしく、何かに対してもどかしいと思ったりするんだな、と安心した。
学校では優等生を演じながらも悪ぶっているのもそうした心の不安定さが成しているのかもしれない。