今さら恋なんて…



「…で、結局シメはここになるわけだ…」

目の前に現れた、仁さんがマスターを務めるお店。


その看板を見上げて、あたしは思わずそう呟いた。


「結局、って何だよ。デートのシメはメシと酒に決まってるだろ?」


「メシ…って、ご飯食べてないけど」


「どうせ酒飲むならメシ食わねぇだろ?」

ドアを開けて、あたしをお店に通しながら、シゲハルは笑う。


「……」


確かにその通りだけど…お酒の飲み方すら知られてるのかと思うと…何か恥ずかしい…。


「おー。いらっしゃい。…ついに今日は同伴か」

カウンターの中で、マスターはニヤニヤと笑った。


「同伴とかやめてくださいよ。…たまたま一緒だっただけです」

あたしはカウンターの席に腰を下ろしながら、そう文句を言った。



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