今さら恋なんて…
「…ねぇ」
「あ?」
「お金払った?」
「あ?」
「マスターに」
「…ああ。あいつにはカード預けてあるんだ。いつも勝手に決済してもらってる」
「……」
「何だよ。…ほら、乗れよ」
黙り込むあたしの背中を押し、エレベーターに乗り込むシゲハル。
「…だから、いつも知らない間に会計済まされてたんだ…」
「そうだよ。あいつとは古い付き合いだから…」
シゲハルはそう言うと、エレベーターの壁にもたれかかった。
「……」
皺1つない細身の紺色スーツ。
光沢のあるライラック色のシャツと、緩くぶら下がった淡いブルーのネクタイ。
エレベーターのボタンを押す時に見えたカフスは四角いゴールドの枠にはまった上品な白いシェルだった。