今さら恋なんて…
「旨そうな脚」
ふっ、と笑った息が脚に掛かって、あたしは思わずピクン、と反応してしまう。
「…そんなに怯えなくても、取って食いはしないよ」
笑いを含んだ言葉が玄関に響いて、あたしのハイヒールがシゲハルの手で土間に静かに置かれた。
コトン…
その乾いた音で、あたしのスイッチが入った気がした…。
「シゲハル…」
「ん?」
顔を上げたシゲハルのネクタイを掴んで引っ張り上げたあたしは、そのヒゲを蓄えた口元に噛み付く様にキスをした。
「…な…」
一瞬のキスで唇を離すと、呆然と呟いたシゲハルの鳶色の澄んだ瞳が真ん丸になってて…何だか面白かった。
「…好きよ。悔しいけど…あたし、シゲハルに堕ちたみたい」
ネクタイを掴んだまま、あたしはその瞳を見つめながら囁く。