今さら恋なんて…
「お風呂入って、乾かす前に寝ちゃったんですか?美容師さんなのに…」
頭のてっぺんから優しい言葉が降ってきて、あたしは龍哉を見上げた。
「?どうかしました?」
龍哉はキャラメル色の瞳を細めて、首を傾げる。
「……ゆ、昨夜…どうなったの…?」
朝からイケメン全開の龍哉に見とれながら、あたしは恥ずかしい言葉を紡ぐ。
龍哉は甲斐甲斐しくあたしの髪に指を通しながら、
「…どう、なったと思います?」
なんて、意地悪な笑みを見せる。
「……」
最悪の事態を想定して、思わずわなわなしていると、
「…目、泳ぎまくってますけど…大丈夫ですか?」
って、龍哉は微笑んだ。
「だ、だって…」
「はい?」
「あたし…やらかしたんでしょ?」
「……女性があまり“やらかした”なんて言わない方が…」
「だってそうじゃん」
「……」
あたしの言葉に龍哉は苦笑い。