今さら恋なんて…
「……ありがとうございます」
「301号室だからねー」
「…それはさっき聞きましたよ。大丈夫です」
「んふふー」
あたしは龍哉の首に手を回して、ぎゅっ、としがみついた。
「…落ちない様にしがみついててくださいね」
龍哉は取って付けた様に呟くと、あたしの部屋に向かった。
「…俺を潰すはずだったのに…」
「んー」
「ダメじゃないですか、先に潰れちゃ…」
「んー」
「…本当に聞いてるんですか?」
「……」
「……聞いてない、か…」
龍哉はポツリと呟くと、エレベーターに乗り込む。
「オートロック付き、なんていいところ住んでますね」
龍哉の呟きがエレベーターに心地よく反響して、あたしの眠りを加速させる。
「…301…ここか」
ゆっくりゆっくり歩く龍哉に揺られて、あたしはもう夢心地だった。