今さら恋なんて…
「…そうですか…。うわぁ…エレベーター混んでるなぁ…」
龍哉は少し辺りを見回したあと、エレベーターホールに目を移し、そう呟いた。
龍哉の言葉通り、エレベーターの前には人だかりが出来ていた。
…何だ…全然お客さん少なくないじゃん…。
このホテルが広いから人口密度が低くなるだけ、か…。
「…こんなに混んでると…こっそり従業員用エレベーター乗りたくなりますね」
龍哉は乗車待ちの列に並ぶと、小声であたしの耳元に囁いた。
「っ…そ、そうだね」
いきなりの囁き声に思わず頬が赤くなる。
距離を近付けるためか、龍哉に腰を絡め取られたことも重なって、あたしの動悸は一気に速くなる。
…ったく…何度目でも…全っ然慣れない。
「?…暑いですか?司さん」
龍哉は涼しい顔をしてあたしの顔を覗き込む。
「ち、違う。…近いってば…」
今日も高いヒールだから、龍哉との距離が近くて…あたしは思わず小さな声で反抗する。