今さら恋なんて…
「司さん。コート預かりますよ。どうぞ、座ってください」
龍哉は、いつまでも突っ立っていたあたしにコートを脱ぐ様に促す。
「う、うん…」
あたしはコートを脱ぐと、龍哉に手渡した。
そして、綺麗に磨かれた黒いバーチェアーに腰を下ろす。
「いらっしゃいませ。どうぞ」
黒髪の彼の手によって、目の前にグラスに盛られたピーナッツが出される。
先輩バーテンダー2人はあたしが席に座ったのを見届けてから、自分達の仕事に戻っていった…。
…何か、いつまでもぼーっと立ってて申し訳なかったなぁ…。
「サンキュ。…どうしたんですか?司さん。おとなしいですね」
龍哉はそうお礼を言った後、あたしの顔を覗き込んで不思議そうな顔をする。
「おとなしいとか失礼だし。…これでも緊張してるのよ」
あたしは思わずキッ、と龍哉を睨んでそう言った。