ゆとり社長を教育せよ。
「……大丈夫ですか?」
その声にハッとして、顔を上げる。
そうだ、誰か親切な人が助けてくれたから、私なんとか自分の身体を守れたんだった……
路地に入ってきた影は私に手を差し伸べていて、私はそれをつかんで立ち上がり、人通りの多い道へと出る。
「あの、ありがとうございました……」
手を離してぺこりと頭を下げ、そして彼の顔を見つめ直した私は驚愕した。
嘘……! た、確かに声には聞き覚えがあると思ったけど!
助けてくれたのがまさかこの人だったなんて……!
「しゃ、社長……?」
会社で見たときとは違う服を着てる。
ラフだけど、ジャケットは羽織っていて、お坊っちゃまのプライベートって感じだ。
驚きで口をぽかんとさせたままの私を見て、月明かりに照らされたわんこ系美男子は苦笑する。
「俺もびっくりしました。一人で店で遊んでたら、知った顔がいると思って。
最初は、自分の秘書のデートシーン目撃しちゃった、なんてのんきに思ってましたけど、なんか途中から様子おかしくなってきて……
高梨さん泣きそうな顔してたから、これはやばいんじゃないかと思って後つけたんです」
「私、泣きそうな顔なんて……」
してない、と思う。
少なくとも、周囲に気付かれるほど顔に出してはいなかったはず。