ゆとり社長を教育せよ。



「――うん、美味しいです。甘さと酸っぱさのバランスがちょうどよくて。これなら問題ないんじゃないですかね?」


にこにこと発言した加地社長の言葉を聞いて、開発部の面々はほっと息をついていた。

壁際に立ってその様子を見守っていた私は、その中に浮かない顔をしている人物を見つけて首を傾げる。

霧生くん……納得いかないような顔でずっとチョコを齧ってるけど、何か気になることがあるのかしら。



「――社長」



そのうちに口を開いた霧生くんは、お茶のペットボトルを傾けていた社長に、こんなことを言った。


「秘書の方にも試食してもらって、意見を頂きたいのですが……」


――え? 私?


「あ、うん。別にいいんじゃない?」

「では、準備するので少々お待ちください」


部屋の隅の箱から、私の分のチョコとお茶を手際よく出して、空いていた社長の隣の席に置いて行く霧生くん。

それをただぼうっと見ていたら、「座らないんですか?」と社長が椅子を引いたので、私は恐縮しながらもその席に着いた。

どうして、霧生くんは私に……?


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