ゆとり社長を教育せよ。
*
「――うん、美味しいです。甘さと酸っぱさのバランスがちょうどよくて。これなら問題ないんじゃないですかね?」
にこにこと発言した加地社長の言葉を聞いて、開発部の面々はほっと息をついていた。
壁際に立ってその様子を見守っていた私は、その中に浮かない顔をしている人物を見つけて首を傾げる。
霧生くん……納得いかないような顔でずっとチョコを齧ってるけど、何か気になることがあるのかしら。
「――社長」
そのうちに口を開いた霧生くんは、お茶のペットボトルを傾けていた社長に、こんなことを言った。
「秘書の方にも試食してもらって、意見を頂きたいのですが……」
――え? 私?
「あ、うん。別にいいんじゃない?」
「では、準備するので少々お待ちください」
部屋の隅の箱から、私の分のチョコとお茶を手際よく出して、空いていた社長の隣の席に置いて行く霧生くん。
それをただぼうっと見ていたら、「座らないんですか?」と社長が椅子を引いたので、私は恐縮しながらもその席に着いた。
どうして、霧生くんは私に……?