ゆとり社長を教育せよ。


「――で、嫉妬にまかせて俺も高梨さんにキスしちゃおっかなって思ってましたけど、それじゃあの人と同じだし、俺は待つことにしました」

「待つって……何をですか?」


その前に、“嫉妬”って言葉も引っかかったけど。

“高梨さんにキスしちゃおっかな”も気になったけど。

ツッコミどころが多すぎて、私は一番害のなさそうな部分についてだけの質問しかできなかった。

社長はにっこり笑って、自分の口元を指さす。



「高梨さんの方から、俺にキスしたくなるのを待ちます」



……害、大アリだった。何それ。そんな日は一生来ませんけど。


「ふざけるのもいい加減にしてください。そんなことばかり言ってると、専務が社長になってしまっても自業自得ですよ!」

「ふざけてません。俺、やっぱり高梨さんのこと好きみたいだから、いつかはキスしたいし。だから、その前にちゃんと何度かデートを重ねて、俺のこともっと知ってもらいたいんです」

「ちょ、ちょっ! ストップ!」


聞き捨てならない発言があったわよ、今!

サラッと言ったつもりみたいだけど、あえて聞き返すわよ私は!


「好き……なんですか? 社長は、私を」

「はい。だからあんな不意打ちキスであなたを困らせる高柳遠矢は嫌いだし、ガーナも行きたくありません」

「い、いつから……?」

「……それは高梨さんに思い出してほしいから、内緒です。とにかく、今週末デートしましょ? 新商品の作戦会議も兼ねて」


思い出してほしいって……そんなことになるきっかけが、今までの社長と私のやりとりであったとは思えない。

だって私、毎日怒ってばっかりじゃない。

謎すぎる……この若者の思考回路。

さらには週末デートですって?

本当は行きたくない。行きたくないけど、新商品の作戦会議なら、行かざるを得ないってだけ。

それだけなんだからね!


「……真面目に作戦会議する気がなさそうだったら、帰りますから」

「はい!」


だから、そんなに嬉しそうに笑うんじゃなーい!!


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