ゆとり社長を教育せよ。
*
「うーん。デート服といえば、やっぱりスカート?」
家に帰るなりクローゼットをひっくり返した私は、全身鏡の前で美也コレクション2014・オータムをひとり開催中。
だいたい、社長はどこへ行くつもりなんだろう。
その場所によって、こっちだって服装を変えなきゃならないのに――って。
「なに、気合入れちゃってんの私……」
デートとは名ばかりの、作戦会議でしょ?
しかも相手はあのゆとりくんだってば!
自分にそう突っ込み着ていたワンピースを脱ぐと、私はベッドに勢いよくダイブした。
「疲れたな……」
社長秘書なんてちょっとカッコいい肩書きの仕事をしてはいるけど、私の住む部屋は狭いワンルーム。
手を伸ばして届く距離にあるテーブルの上からテレビのリモコンを取ると、とりあえず電源を入れてみる。
そしてパッと画面に映し出された映像を見て、私は思わず「げ」と口に出してしまった。
『――この口どけ、まるでキミの唇』
今日撮ったのとは別の、旧バージョンのCM。
もちろんそこに映るのは、キス魔の高柳遠矢だ。
……あれ、何年ぶりのキスだったんだろ。
最後に付き合っていた相手は、ゆとりくんの部屋にあった写真のなかで笑うあの彼だ。
彼と別れてかれこれもう五年……それから新しい彼氏はできていないから、キスしてない期間も同じ五年か。
結構ひからびてるなー、私。