ゆとり社長を教育せよ。

こんな時、私の好きだった少女マンガなら、白馬の王子的存在が現れて、なぜか向こうが自分を溺愛してくれるっていう都合いい展開が待っているけれど。


『高梨さんの方から、俺にキスしたくなるのを待ちます』


――どういうわけか、私のところに来てくれたのは、ぼんやりしすぎて白馬から落馬しそうなあのゆとり王子。

この場合の“王子”は、ちょっと馬鹿って意味がこもってるから全然嬉しくないし。

年下だし、頼りないし、勝手だし。私の理想の男性とは真逆。


「なんで彼は私のこと好きなんだろ……」


社長は、“高梨さんが思い出してくれるまで待つ”みたいなことを言ってたけど、ほんとに心当たりがない。

むしろ、千影さんに無理矢理迫られて泣いたり、包丁で手をざっくり切ったり、いつも彼の前ではみっともないところばかり見せているのに……



『だから、放っておけねーんだよ』



……ああ、もしかして、そういうこと? ってなによ今の台詞。


顔を上げると、なにやら強引そうな男が女の子を壁ドンして今にもキスしそうなシーンがテレビに映し出されていた。

二人の服装から察するに、これはオフィスラブってやつだろう。

こういうドラマもずいぶんご無沙汰してたなぁ……しかも、今ちょっといいトコかも。


『いつも強がってばっかいるけど、誰も見てないとこで泣いてんの、俺は知ってる。――いい加減、俺に落ちろよ……』


わー。こういうこと、言われてみたい。

そろそろキスかなと期待してみるものの、やたら間が長い。

眠くなってきた……でも、続きが気になる。


おりてくるまぶたを必死で押し上げながら、私はドラマを見続ける。


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