ゆとり社長を教育せよ。
私は霧生くんの問いに大きく頷き、運ばれてきた中ジョッキで乾杯すると、ぐびぐびっと一気に飲み干した。
「……すごいな。なんかストレスでも溜まってんの?」
「ええ! そりゃもう!」
そうだそうだ、せっかくなんだから霧生くんに愚痴っちゃお。
秘書課の皆はドライだから話し甲斐がないし、第三者の誰かに吐き出したいところだったのよ。
私は日ごろの社長の仕事ぶりと、それから忌まわしきCМ撮影の件、そして明日社長とデートする羽目になってしまったことまで、包み隠さず話した。
――でも、私があまりに一方的にしゃべり続けたせいか、最初は笑顔だった霧生くんが途中から無表情に変わってしまった。
もしかして、気を悪くしたかな。
せっかく誘ってくれたのに、文句ばっかりなんて。
「……ゴメン。なんか、私ばっかり喋って。しかも、他人の愚痴なんて聞かされる方は苦痛だよね?」
二杯目から焼酎のロックに変わった彼がグラスを傾け、氷をカランと鳴らす姿を見ながら、私はそう言って謝る。
「いや、いいよ別に。……ただ、今の高梨の頭ん中って、社長のことばっかなんだなーと思って」
「……? だって、彼のお守りが仕事だもん。それ以外に考えることがないだけで」
「そうかな。高柳遠矢のことは本気でムカついてるの伝わったけど、社長のことはそうでもない感じに聞こえたけど」
「ええ?」
……いやいや、毎日怒鳴ってばっかりよ?
そりゃ、高柳さんみたいに人の気持ちを無視して強引なことをしない分、社長の方がマシだとは思うけど。
あのふわふわした感じに毎回腹が立って腹が立って……
「ま、高梨が気づいてないならいっか。こっちも先手打てるし」