ゆとり社長を教育せよ。


しばらく気まずい沈黙が続き、お互いにお酒の量ばかりが増えていった。

そんな中、先に口を開いたのは、霧生くんの方だった。


「……明日、デートだって言ってたっけ。社長と」

「う、ん……。行きたくはないけど、予定もないし」

「“行けない理由”があればいいのか?」


うつむきがちだった私は、その言葉に顔を上げた。

お酒を飲んだせいなのか、視線の先にある霧生くんの瞳に男の色気みたいなものを感じてしまって一瞬どきりとしてしまう。



「出よう」



私が何も返事をしないうちに、そう言って立ち上がってしまった彼。

慌ててその背中を追いかけようとすると足がもつれて転びそうになる。

やば……飲みすぎたかも。


外のひんやりとした空気に触れるといくらか酔いは醒めたけど、隣に並んで歩く霧生くんがなにを考えているのかは全然わからない。

これから、彼がどこへ向かおうとしてるのかも。


「……どこに行くの?」

「俺んち」

「え――――」


……デシャブ? なんか、この状況、前にもあったような。

あぁそうだ、あの時と全く同じなんだ。

酔っぱらってふわふわした思考のままで、彼の家に行くっていうことが。


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