ゆとり社長を教育せよ。
*
――あの時は、そう。お互い他に想う人がいたから、踏みとどまったけど。
今回の霧生くんはきっと本気。
私、どうしたら……
「……高梨はさ。俺と誰を、天秤にかけてんの?」
「天秤……?」
「今、こうして俺と話してても、ちらちら頭ん中に誰かいるんじゃないかなと思って」
……どうしてわかったんだろう。
仕事中以外は思い出したくないのに、ずっと同じ人が私の中に居座ってて、心をそわそわさせてる。
「高梨は絶対に否定すると思うけど……俺は、その人が今の高梨の好きな人だと思うよ」
その人……つまり、加地社長?
「……まさか」
私がそう言うのと同時に、バッグの中で着信音が鳴った。
スマホを取り出して誰からの着信なのかを見た瞬間、大きく心臓が脈打つのを感じて、私は思わず助けを求めるように霧生くんを見てしまった。
「社長?」
「……うん」
「それ貸して」
「え、ちょ……っ」
戸惑っている間に手の中からスマホが奪われ、霧生くんは勝手に電話に出てしまった。
「――お疲れ様です、社長」