ゆとり社長を教育せよ。


何を話すつもりなんだろう……

まさか、さっき言っていた“私の好きな人”に関する彼の見解を伝えるつもりじゃ……


「ええ。高梨の携帯で合ってますよ。でも、今彼女酔っぱらっていて電話で話せる状態じゃなくて」


ちら、と私を見ながら言った霧生くん。

いや、電話くらい出れますけど。ただ、社長と何を話したらいいのかわからないだけで……


「ああ、迎えはいいですよ。これから俺がお持ち帰りする予定なんで」

「……え、ちょっと、何言って――――」

「それじゃ、失礼します」


そう言って電話を切ったらしい霧生くんは、私の目の前にスッとスマホを返してきた。


「どうして、あんなこと……」


聞きながらおずおずと手を伸ばしスマホを受け取ろうとしたら、その場にまたも同じ着信音が鳴り響いた。

ディスプレイに表示された名前も、さっきと同じだ。


「……出てやんな。超焦ってると思うから」

「でも……」

「先手打てば勝てるかなと思ったけど……高梨見てたら俺なんか眼中にないって感じだから、諦めることにするよ。その代わり、自分に素直になれよな」

「……なにそれ」

「明日のデートで、キスの一つでもかましてこいってこと」


捨て台詞みたいにそう言って、私に背を向け歩き出してしまった霧生くん。

霧生くんの言うことは全部が全部、まるで私が“彼”を好きであるみたいな風に聞こえるんだけど。

そんなこと、あるわけが……


気持ちをモヤモヤさせたまま、とりあえず着信音がうるさいので電話に出てみると。


「……もしもし」

『――っ!高梨さん! まだ食われてない!?』


聞こえてきたのはゆとりのないゆとりくんの声。

もう……着信音より、うるさいっ!


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