ゆとり社長を教育せよ。
「それにしても、誰なんだろ。こんなタチの悪いいたずら」
隣でハンドルを握る社長が、そう言ってため息をついた。
風で後ろに飛んで行く髪に手を差し込みながら、私も自分にこんなことをする相手に心当たりがないか、思いを巡らせてみる。
普通無言電話って、気に食わない相手にするものだろうけど……誰かに恨まれるようなことをした覚えは…………あ。
「……高柳さんの、ファンとか……あり得そう」
あのCMはまだ放送してないけれど、イベントの時にも変な発言してたし、あの人。
「あー……確かに可能性はありそうですね」
そうだとしたら、本当に迷惑な話だ。私は彼のファンですらないのに……
でも、どうやって私の電話番号を手に入れたんだろう。
「自宅の場所とかも知られてたらいやですね」
私が悶々と思い悩んでいるところに降ってきた、そんな言葉。
思わずぞっとした私は、社長の横顔を見つめて言う。
「知られてたら、どうなるんでしょう……」
「うーん……無駄にピンポン押されるとか、郵便物に刃物入れられるとか……最悪、実際に犯人が訪れてくるかも」
「犯人……」
高柳さんのファンなら、女……よね。それならそんなに怖がらなくても平気かもしれないけど、もし男だったら……
自分の腕を片手でキュッと抱き、悪い方向にばかり進みそうになる自分の思考をなんとか落ち着かせようとしていると。
「――今夜は、俺の部屋で寝てください」