調導師 ~眠りし龍の嘆き~
‡〜過去の逢瀬〜‡

「毎晩会いに行った」
「あなたが、あの時の人っ…」

覚えている…色んな話を聞かせてくれた人…。

「すまなかった…怪我をさせてしまった…」
「仕事だったんでしょ」
「けど、殺そうとしたのは事実だ…酷い怪我をさせた……傷痕が残るほど…」
「…気にしなくていい」
「だがっ」
「いいんだっ…先生っ私外にいるっ」

何だかだんだん腹が立ってきた。
勢いよくカーテンを開け、外に出る。
後ろ手でカーテンをピッシャッと閉めると、振り返らずに待合室まで駆け出た。
乱れかける息を整えて、椅子にドカっと腰掛ける。
それまでポケットにしまっていた小刀を取り出し、握りしめる。

分かっていた。

力を使って小刀に触れた時、全て知ることができていたから…。

「シン…」

小刀が見せた日々は、胸が苦しくなるような日常だった。
辛さと、悲しみ…しだいに感情さえ必要がないのではないかと思えるような、ただ言われた通りにしか行動を許されない生活。

一族の者は知っていたのだ…あの扉を隔てて毎夜繰り返していた逢瀬を…一族は欲していた…。



感情のない人形のように裏の仕事をする者を…。

調導の力を持ち、一族の意思に従う者を…。




それが、シンであり私であった。

二人が知り合った事で、お互い寄りどころを見つけてしまった。
自我をなくす事なく支えあう存在となって…。


歯がゆく思っただろう。


父親の言う通りに仕事を覚え、疑問も持たずにただ従順に従う者が手に入ったはずなのに…。


唯一の寄り所であった父親を亡くしたことで、力をゆっくり覚醒させ、道具として扱える者が手に入るはずだったのに…。


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