調導師 ~眠りし龍の嘆き~
「何の音?」

かなり響いてきた。

音は少し離れているが、何の音だろう。

「あなた…藤武…」

あの部屋に入れられて長い時間が経った。

鉄格子のはまった少し上に付けられた小さな窓。

扉には下の方に小さな開き。

日に二度、食事が差し込まれる。

狭いけど、しっかりした部屋。

マンションかアパートの一室のような部屋。

生活する為の設備は全て整っている。

何日もここに閉じ込められているが、不自由はない。

ただ気がかりなのは、大切な家族。

愛する夫。

愛しい息子。

一体どこにいるのか。

屋敷の感じからしてかなり広い。

どこにいるのか見当もつかない。

何よりこの部屋から出ることはかなわない。

部屋に放り込まれて、すぐに頭をフル稼働させた。

今の状況。

自分の置かれた立場。

連れて来た人達の意図。

結論は出た。

どうやら出る事はできそうもない。

自分は、夫の一族には邪魔な存在だろう。

そして、夫だけではなく、自分まで連れられて来たと言うことは、何かに利用するつもりなのだろう。

それが何かは明確には分からない。

けれど、ろくなことじゃない。

恐らく夫に対しての人質だ。

この一族が夫に対してどう思っているのか分からない。

少なくとも、家出同然の夫を連れ戻す理由ができたのだろう。

では、自分はどうするべきか。

大人しくしているのが一番だろう。

下手に騒いではこちらの身が危うい。

「未だに手を出してこない…。
まだ使い道を考えあぐねている……?」

多分あっている。

人質としてどのように使うのか。

それを思案している状態なのだろう。

ここは、夫を信じよう。

きっと助け出す為の算段を考えているはずだ。

見捨てるはずがない。

心配なのは藤武だ。

まだ幼い。

病気をしていないだろうか。

泣いていないだろうか。

好き嫌いが多いから、きっとお腹を空かせているだろう。

連れて来られた時は、五つだった。

もう何年たっただろうか。

気が遠くなる程の月日。

「一年…いや、二年…?」
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