冬美の初恋
「……謝ろうと思って」

「…………」

「あのとき、酷いこと言ったから」

「別に……言ってないし、もう関係ないことだから」

そう言って、雨は力を込めて抜こうとした。

関係ないと言われたらそうだ。

もう、別れた訳だし。

でも。

「私は……もう一度、やり直したい」

私の言葉で、雨は私を見上げた。

上目遣いで見つめられながら、続けた。

「雨の過去……気にならないって言ったら嘘になるけど…」



「それでも、一緒にいたい」

今度は下を向かれた。

「………………靴、脱げる?」

話、そらされた。

「脱ぐの?」

思わず聞き返した。

「行けそう?」

多分、泥の中の草木に足先がひっかかっていた。

強引に引っ張って足を痛めないように、いっそ足だけ出しておこう…という事だろう。

雨に言われて、沼の中で右足首をのばして、力をいれて靴を脱いだ。

「…………脱げた」

雨はまだ泥を探っている。

取り残された靴を探してくれているのだと思った。

「いいよ、靴は」

苦戦している雨に、罪悪感を感じた。
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