冬美の初恋
靴なんてセールで買った安物のローファで、特に思い入れもない。

取り出せても、どうせ泥まみれで履けないし。



「あった」

それでも雨は諦めずに、泥の中から靴を救い出した。

そして立ち上がり、靴の中の泥を払った。

「あ、ありがとう」

この靴は………家宝にしよう。

「……ごめん」

「え?」

急に謝られた私は、差し出された靴と、雨の顔を交互に見た。

「…ずっと考えてた。何で、あんな事したのか…とか、話さない方がよかったかも…とか」

「……………」

「俺の過去を話したとこで、俺がスッキリするだけで……フミが困るのはわかってたのに」

雨は悔やんでいたのだ。



「………私は、嬉しかったよ。雨が打ち明けてくれたの」

「………………」

「辛かったけど…あの時、知らないままだったらきっと雨とちゃんと向き合えずにいたと思う。なんか、どっちかって言うと……現実にいる雨より、自分の好きな雨を勝手に作り上げてた…ていうか」

自分で言ってて、恥ずかしくなった。

でも、本当のことだ。
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