冬美の初恋
転んだ拍子にポケットから落ちたらしい。

「ああ…さっき、帰るときにおばちゃんにもらったの。育てると良いことあるんだって」

「……ふーん。育てんの?」

「んーん。幸せになってほしい人にあげるのもいいって言ってたから、お兄ちゃんとノリちゃんにあげることにした」

私はジャージについた砂を払いながら立ち上がった。

「……山瀬たち?」

雨も立ち上りながら聞いてきた。

「うん。私は雨に会えた時点で幸せだし」

あの二人には、今回のことでお世話になったし。

「………………」

心なしか、雨の顔が赤くなった。

雨にあげるという選択肢もなかった。

なぜならば。

「……雨も、私が幸せにするし」

まぁ、あんまり雨に友達が増えても妬いちゃう…てゆうのもあるんだけど。

「…………………」


それまでの私は、自分の中の雨に恋していた。

でも、今は違う。

ちゃんと、現実を見て、雨が好きだと言えるよ。

「雨の事だったら何でも知りたい、今までの雨も……これからも」

「………………」

「何年先の雨も」

先のことは、わからなくても…雨といたい。


「好きだよ」

もう、口癖みたいになってる。

「……知ってるって」
< 132 / 134 >

この作品をシェア

pagetop