愛されオーラに包まれて
「私が"由依に会いたかった"って本人に言ったら…」
『うん』
「自分の地位と優越感に浸るためなら、"会いたかった"と偽善者になることなんて容易いでしょ?龍成社の社員さん、って」

泰河は"ウッソ"と驚いた声を上げる。

『神戸さん、そんなこと言ったのかよ』

局長は、表情を変えず、何かを考えているように見える。
私は、ショックな気持ちが反芻し、その場でさらに泣く。
それを見た泰河は、私の肩を抱いた。

『ごめんな。俺の中途半端な正義感で、さらに遥香の傷口を広げてしまって』

ちょっと、局長の前でそんなことしないでよ。
そう思って泰河の手を払い除けようとしても、泰河の力が強い。

『高松、そのままでいいよ。お前らに当てられて腹を立てるほど俺は愛に飢えてないから』

すました顔をして局長は言った。

『どうしたらいいのでしょうか。いっそのこと、神戸さんに担当を代わってもらうとか』

泰河はそう言うけど、局長は首を横に振った。

『わかば堂書店とは古くからの付き合いだ。本店は立地もいいのでイベントをやるには持ってこいだし、わかば堂書店の売上データをネットで検索できるサービスは、他の書店に比べて秀逸なシステムだ。そのような書店とは、高松がここで働いている限りは必ず関わることになる』
『そうですけど』
< 175 / 345 >

この作品をシェア

pagetop