*あかずきんちゃん*
ぼくは赤ずきんちゃんを側にあった大きな木に隠し、体を屈めた。
震える身体を押し殺すため、お腹の底から唸り声を上げて一気に人間ふたりに向かって突進する。
ガウン、ガウン。
ぼくに向けて銃が発射されるけど、でもぼくはこの村のオオカミ族最強の長の息子だ。
こんな遅い弾には負けない!!
「赤ずきんちゃんは、誰にも渡さない!! ぼくが守るんだっ!!」
宣言すると空高く飛ぶ。
人間の銃口がぼくを狙った。
だけど、空高く舞い上がったぼくの背後にはお日様がある。
ギラつくお日様を直視した奴らは目がくらんだみたいだ。
一瞬体勢がグラついたのをぼくは見落とさない。
隙をついてクマさんみたいな人間の顔を思い切り蹴り上げた。
隣にいる人間も同じようにしてもうひとつの足を伸ばして蹴る。
「ぐあっ!!」
人間たちは最後に声を上げるとそれっきり立ち上がらなくなった。
ぼくは……勝ったんだ!!
誰にも勝てない、弱いぼくだけど。
勝った、勝ったよ!!
赤ずきんちゃん、ぼく勝ったんだっ!!
喜びに打ち震えるぼくは大きな木に隠れさせた赤ずきんちゃんの前まで勢いよく走った。
「赤ずきんちゃん!!」
「っひぃっ!!」
ぼくは、赤ずきんちゃんに手を伸ばす。
だけど……。