死が二人を分かつとも
「残骸がいないのって、やっぱり雨に当たったせいなのかな」
枯れ木の森に人影はなし。
声を出しては、残骸の呼び水になるかと懸念したけど、現状、これとしたものはやって来ない。
「“飛べない奴”も見ないし、もうしかしたら」
「雨が止んだ後も、鳴き声は聞こえた。複数」
だからこそ、歩く足を休めない弥代くんには油断の文字が消えている。
三人で何気なく話しているつもりでも、少し視線を下に向ければ禍々しい凶器が、弥代くんの腕と一体化したように固く握られていた。
視覚だけじゃなく聴覚もフル活用して、辺りに気を配っているのだろう。
「……、ちっ。来たか」
忌々しさを込めた舌打ち。
彼が最初に気付くのは当たり前。
私に危険を教える暇も惜しいと、彼は行動する。腕を引かれた。
「走っても追いつかれる。俺の後ろにいろ。絶対、前に出るな。もしもの時は、俺置いて逃げていいから」
頼もしい背中。
盾のように重々しくもある。
「逃げるなんて、私も……!」
「そよ香なら、そう言うと思った。全力で守る」
苦笑しつつ、却下された申し出。
枝を武器代わりじゃ、やっぱり足手まといのようだ。
心臓の鼓動が聞こえるほどの静寂に紛れて、砂を蹴る足音がぼそぼそと聞こえてくる。
耳を澄まさなければ分からない音も、数秒ではっきりと鮮明になる。
速い。頭でチーターを連想してしまう。
「このまま、通り過ぎてはくれないか」
斧の柄を両手で持ち、構える。
右足が大きく下がり、一拍置いた後ーー