死が二人を分かつとも
「キ、キャキャキャキャ!」
哄笑。
鼓膜を直接揺るがす音が、重なる。
一匹二匹三匹とーーカエルの合唱めいた哄笑が重なった。
カナカナの鳴き声のはずが、間近で聞けばこんなにも耳を塞ぎたくなる騒音となる。
鼓膜から骨まで通る音は、耳を塞いだところで消えやしない。
全ての音が呑まれる。
耳鳴りするほどの笑い声でも、騒音の製作者にとっては気にもならないことであり。
笑いの渦中で、一匹の“犬”が口火を切った。
「キ、カカカカカ!」
私たちではなく、チロを選んだのは、単に近場にいたからだろう。
「チロ!」と危険を声で投げかけたところで手遅れ。食べられる一歩前ーー私が声をかける前よりも、弥代くんは前に出ていた。
「退いてろ」
「ふぎゃ」
逆手でチロを押し飛ばす。押された勢いが強すぎて、力の流れのまま飛んできたチロは、後方にいた私の体にぶつかる。
痛さはない。ぶつかったチロを手で受け止めている最中、断末魔。
弥代くんの斧が、血に染まっていた。
「白いくせに、血は赤いのか」
こびりついた斧の血を水溜まりで落とす。
その間にも他の“犬”が襲いかかってくるが、弥代くんの一振りにより地面で悶えている。