死が二人を分かつとも
(三)
「今日は、何の日だ」
問いかけが、目覚めの合図となった。
見回せば、ワンルームの部屋。
狭いと感じない、家具が少ない整った部屋は、男子高校生と言うよりも年老いた人の部屋に思える。
だからこそ、部屋の壁に貼られた一枚のポスターが異彩を放つ。
彼が好きなアーティスト。恐らくは、嫌いな人はいない有名な歌手の写真。そうして、そのポスターによく似た人が私の前に座っている。
机を挟まず、何か大切な話をするかのように対面していた。
かくいう、大切な話というのが。
「……えっと」
私には預かり知らぬところだった。
「覚えておけって。女子は、そういうの大切にしているとか聞いたのに……。これじゃあ、まるで俺が女っぽいってなるだろう」
恥ずかしげな彼。この部屋にカレンダーはない。差し出された彼の携帯電話ーーディスプレイのカレンダーは、6月18日を指している。
「俺たちが付き合い始めて、一年目」
「早いね」
素直な感想を一つ。
いつの間にか、もう一年か。
「結局、この一年間、お前と俺のデートはここだったよな」
イコール、私たちの関係は誰にも知られてはいない。
このまま、ここで過ごせば、またあっという間に一年経ってしまうのだろうか。
「一年の記念だからさ、色々考えたんだ。思い出に残ることしたいって。そうなると、おんなじ場所でおんなじことしていたんじゃ、他の記憶に埋もれちまうだろ?
だから、生涯あるかないかのことをしようと思う」
隠していたと言わんばかりの場所ーーベッドの下から封筒を取り出す彼。
白い封筒を私に渡すのだから、開けていいの現れだろう。
開ける。出て来たのは、二枚のーー
「チケット……、レインのライブのチケット!」
目を見開いてしまった。
目が飛び出すほどの驚愕ぶりだ。
「ど、どうしたの、これ!」
「買った」
「か、買ったって、ライブのチケット高いし、そもそも、レインの人気高いから抽選なのに」
「当たった」
さらりと言ってのける彼とは対照的に、私の興奮は湯水のように溢れてくる。
そもそも、ライブに行ったことがない身としては、テレビの向こうの話でしかなく、イヤホンからの音楽を聞く程度で満足していた立ち位置にいたのに。
「つき合ってから一年目記念のプレゼント」
まさか、夢のまた夢に会えるなんて。
嬉しさから、彼に飛びつく。
「現金なやつだな」と苦笑する声が頭にかかった。
「そのライブ、他県でやるし、抽選なら、俺たちを知っている奴がいることもないだろ?というか、レインのボーカルばっか見て周りなんか気にしないだろうし」
彼の気遣いと頭の良さには、頷いて答えるしかない。感激し過ぎて、言葉が出なかった。
頭の中は、凄いと嬉しいの大洪水だ。
気が早く、ライブはどんな格好で行こうかと考えていると。
「なあ」
肩に手を置かれた。