死が二人を分かつとも
体を離し、また大切な話をする対面となる。
「一年前、どうしてお前は、俺の告白受け入れてくれたんだ」
洪水はあっという間に流れていく。
何も残さず、まっさらな場所に、彼の声が浸透していった。
「俺は、前々からお前のことが好きだった。だからあの日、雨で動けず、一人でいたお前に『今しかない』って告白したんだ。そしたら、お前は俺の手を取ってくれた。あの時は、お前と付き合えることになったから舞い上がって深く考えてなかったんだがーー」
彼の目線が、部屋のポスターに移る。
「お前は、俺の何が好きなのか。そんなことを、考えるようになった。俺なんか、そよ香の好きなとこあげたらきりないぐらいだけど、そよ香はどうなんだと不安になってきた。ーーでさ。今、チケット渡した時のそよ香の反応で思った」
彼が言いたいことは、知っていた。
私自身が“よく分かっているのだから”。
「そよ香は、俺がこいつに似ているから、好きなのか」
こいつとは、レインのボーカル。
誰が見ても、かっこいいと思える顔立ちの男性。
「俺がこいつに似ているなら、他にもレインのボーカルに似ている奴がいてもおかしくないだろ?そいつから告白されたら、お前はやっぱり手を握ったんじゃないのか。俺でなくてもーー」
不安の塊を、人差し指でつついてヒビ入れる。
「一年も、これからも、何年、何十年経っても一緒にいたいと思えるのは、弥代くんだけだよ」
次に言葉で、一気にとどめ。
「弥代くんの言うとおり、最初は弥代くんの外見で付き合ったのが大きい。それまで弥代くんとは話したこともないし、遠目から見る憧れの人って感じだったから。
告白された時、雲の上の人がしてくれたって感じで舞い上がっちゃったけど、私も不安だったんだ。どうして弥代くんが、私を選んだのか。もしかしたら、罰ゲームか何かかなって、不安と警戒があった」
「警戒って……罰ゲームで告白するなんてしない!俺は本気で」
「うん。本気が分かってから、ますます私も、本気になれた」
時間が経つのが早いと思えるほど、彼と過ごした月日は居心地が良すぎた。何度、時が止まればいいと思ったことか。
かっこいい見た目だけじゃない。人一倍繊細で優しく、本気で愛してくれた人が、私の恋い焦がれに拍車をかける。
何年先の未来でも、隣に彼がいると楽に想像出来た。
「なら、今は俺の見た目とか関係ないのか」
「ないよ。弥代くんがどんな見た目でも、私は好きのまま。弥代くんも、私がどんな見た目ーー激太りとか、激やせしたとかしても、好きだよね」
「当たり前だ。ただ、どっちも健康に悪そうだから、そうなったら一緒に頑張って治す」
「健康になって長生きしようね。年老いて、よぼよぼになっても、私は弥代くんのこと好きなままだよ」
付き合う年月が長いほど、見た目は二の次になる。
憧れの歌手に似ていたは、きっかけでしかない。彼が彼でなければ、私はこんなことを言わないのだから。
「なんか、気が抜けた。最近、それしか頭になかったからさ」
肩から力が抜けるような彼の支えになる。
もたれる体は甘えている形でもあった。