愛を欲しがる優しい獣
丁度良い機会だと思い、俺も気に入った商品を持ってレジに駆け込んだ。
「鈴木くんも何か買ったの?」
俺は水族館のロゴ入りの紙袋を佐藤さんに向かって差し出した。
「はい、佐藤さんに」
「私に?」
掌に収まるサイズのそれを、無理やり握らせる。
「この間、お茶碗ももらったし。そのお礼ってことで」
「ありがとう」
本音を言うとこの日のことを忘れて欲しくないがために、何らかの形で佐藤さんとの思い出を残しておきたかったのだ。
こうして思い出を残しておけば、君はいつか俺のことを好きになってくれるのだろうか。
答えはまだ、誰も知らない。