愛を欲しがる優しい獣

心のどこかで鈴木くんは他の男の人とは違うから大丈夫だろうと思っていたけれど、彼だってちゃんとした欲望のある普通の男性だったのだ。

それをまざまざと見せつけられたような気がした。

(鈴木くん、慣れていたな……)

チェックインからチェックアウトまで、鈴木くんの動作にはひとつも無駄がなくて、私ばかりが初めての場所に動揺していた。

……経験がないことに気づかれてしまっただろうか。

(でも、お付き合いするってことはそういうことも込みなのよね……)

“俺に、もう一度だけ恋してみませんか”

あの時、鈴木くんはそう言ったけれど。

もしかして、そういうこともしますけど良いですかという意味も含まれていたのだろうか。

ああ、もう、どうしたら良いのだろう。

(心の準備が…っ…)

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