愛を欲しがる優しい獣

(うわ、冷蔵庫なんにも入ってないや……)

腹が減ったと冷蔵庫を開いてみれば、入っているのは最低限の調味料と水だけで。

食糧庫としての役目を果たさない冷たい箱は、俺の胃を膨らませることはできなかった。

(こんなことなら買い物でもしてくるんだった)

後悔してももう遅い。

引きこもると決めた後で、買い物に行くのも面倒だった。

ペットボトルの水を冷蔵庫から引っ張り出して、胃に流し込むと空腹感は幾分マシになった。

仕事をしなくても良い、平日は至って暇だった。

溜まったゲームと録画してあったDVDを消化する良い機会だと思って、時間を気にせず没頭していたらいつの間にか寝ていたらしい。

窓の外を見ればとっくに夜も更けていて、どれくらい寝ていたのか正確な時間も分からなかった。

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