愛を欲しがる優しい獣
「またゲームか?」
ラスボスに技を繰り出していると、仁志さんが紙コップ片手に背後から覗き込んできた。
「仁志さんもやる?」
「バカ言うなよ。俺が今年いくつになると思っているんだ?」
「さあ」
仁志さんがいくつになるのか興味を持ったことがなかった。確か、父親と一回り違うはずだから40歳かそこらだろう。
仁志さんは俺の隣に座ると、自分の持ってきたワインのコルクを抜いた。この部屋のどこにコルク抜きなんてあったんだ。
「お前、会社で何しでかしたんだ?」
紙コップに真っ赤な液体が並々と注がれていく。
「だから何もしてないって」
「ふーん。何もしていないのに謹慎か。サラリーマンは大変だな」
(謹慎じゃなくて待機だってば……)
いい加減訂正するのも面倒になって、仁志さんが注いだワインで喉を潤す。差し入れで持ってくるにしては、良いワインだった。
もしかして、仁志さんなりに気を遣っているのか。