愛を欲しがる優しい獣
55話:応援合戦
「本当に大丈夫?」
出掛ける前に佐藤さんは何度も念を押すように尋ねた。
こう何度も聞かれると、信用されていないような気持ちになってくるがそれも仕方ない。
他人に弟妹を預けるなんてことは、佐藤さんにとっても初めてのことなのだろう。
「大丈夫だよ。早く行かないと遅れるよ」
待ち合わせの時刻にはまだ間があったが、この様子では遅刻しかねない。
「何かあったらすぐ連絡してね?」
「分かっているよ。いってらっしゃい」
佐藤さんは家を出た後も、何度も何度もこちらを振り返った。
ようやく姿が見えなくなる頃には、軽装だった俺の身体はすっかり冷え切っていた。
寒い、寒いと呟きながら家に入る。
案外、弟妹離れが出来ていないのは佐藤さんの方かもしれない。