愛を欲しがる優しい獣
「もう、終わりにしない?」
鈴木くんはテレビをザッピングしながら尋ね返した。
「何を?」
私は何でもないことであるかのように振る舞うために、皿を拭きながら答えた。
「……すべてを」
終わらせることに躊躇いはなかった。本当はもっと早くこうするべきだったのだ。
付き合い始める前と同じで、ずるずると彼の気持ちに甘えたのがいけなかった。
鈴木くんは唐突に別れを切り出した私を訝しんだ。
「小林さんに何か言われたの?」
「違う」
「他に好きな男でもできた?」
「ううん、どちらも違うの。ただ、私がそうした方が良いって思っただけ」
鈴木くんには鈴木くんの人生があって、こんなところで貴重な時間を浪費させてはいけない。