愛を欲しがる優しい獣
「ほら、私って平凡だし、家事くらいしか取り柄がないし、美人でもなければ頭の回転が早いわけでもないし」
明るく聞こえるように努めながら、拭き終わった皿を棚にしまう。鈴木くんの方は決して見ないようにする。顔を見てしまったら、最後まで言えなくなってしまう。
「だからもういいの。私のことなんて待たなくて」
(ごめんなさい。わがままで……)
終わりを決める権利なんて本当は私にはないのに。
「鈴木くんにはもっと相応しい人がいるわ」
……その人はきっと私より鈴木くんを大切にしてくれるだろう。
これは彼のためなのだと自分に言い聞かせる。
私に残された選択肢はお別れを言うことだけだった。