声をくれた君に
放課後、私は教室の掃除をしていた。
もちろん悠梓くんと一緒に。
(やっぱり悠梓くんは綺麗好きだよね。
隅々まで掃除してる…)
彼自身はあの頃と何も変わらない。
ただ私が本当の彼を知っていっただけ。
(そういえば今日、何もされなかったな…
小田さんにも。
本当に普通の世界になったんだ…
変な感じ)
ずっと望んでいたことなのに
いざとなると実感が沸かない。
(だって声が出せるようになって
悠梓くんと付き合えることになって
お父さんとも一緒に暮らせるようになって
幸せが一気に来すぎて、私が追いつけないよ…)
そんなのんきなことを考えてしまった。
手も動かさずに
「おい、ばか珠李」
「いてっ」
悠梓くんは私にわりと強めなデコピンをかました。
「い、痛いよ、悠梓くん…」
「あんたがぼーっとしてサボってるからだろ。
今日の日直は誰だ?」
「私です…」
「わかってるじゃねーか。
じゃあ罰として俺を何か喜ばせろ」
(なんてざっくりなご命令…
悠梓くんが喜ぶこと…)
私は懸命に考えた。