声をくれた君に


「よしよし、照れてるんだね」

私はつい調子に乗って、彼の頭をわしゃわしゃと撫でた。

「おい、調子乗んな」

「だって、悠梓くん可愛いんだもん」

「男は可愛いって言われても喜ばねーぞ」

(だって、可愛い以外に言葉が見当たらないくらい可愛いんだもん…)

「はあ…

そんなこと言ってると」

彼は顔を上げた。

それはもう照れた可愛い顔ではなく

男の人の顔。

彼は私の両サイドに手を着いた。

驚いた私はそのまま尻もちをつく。

床と彼に挟まれた状態だ。

(なんかデジャヴ…

いや、保健室の時と同じだ…!)

「どうなってもいいってことだよな?」

「そ、そんなこと…!」

どんどん彼の顔が近づいてくる。

でもあの時のようにとどまることはない。

「んん…」

いつもより少しだけ強引に、

押しつけられるような唇。

彼の温かいそれは、いつまでも離れようとしない。

(息が…苦しい…

でも、幸せ…)

しばらくしてそっと離れていくと、私は慌てて空気を吸った。

「はぁ、はぁ…

もう…長いよ…」

「なにその顔

もう一回したいの?」

「そ、そんな顔してないよ!」

私はほっぺたを膨らませてみせた。

「また今度な」

(もう、違うって言ってるのに…)

そんなことを思いながらも

どこかでまた今度を期待していた。

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