声をくれた君に


小田さんは私が渡した紙を持って前に出た。

公式を使いながら、ゆっくり数式を解いていく。

「よし、正解だ、よく頑張ったな」

無事解けたみたいだ。

(ふぅ、よかった)

席に戻ってくる小田さんは、私と目を合わせてくれなかったけど

(あの紙、使ってくれたんだもん。

少しは近づけた…よね?)

小田さんの表情は、長い髪に隠れてよく見えなかった。

その日の二時間目は国語。

私の苦手教科。

それに

(声が出るから当てられる可能性あるんだよね…

しかもあの先生のことだから…)

「じゃあ今日は誰に読んでもらおうかなー

よし、櫻田!

せっかく声が出るようになったんだ、思う存分読め!」

(やっぱり…!

はぁ、難しい漢字とかなければいいけど)

「…現代、不景気となったこの国は、汚職事件も多く、人々は強い…」

(憤り…

え、何この漢字?!

悠梓くんに聞くのは恥ずかしいし

先生に聞いたら絶対バカにされるし…)


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