声をくれた君に


「よし、あとは冷蔵庫で冷やすだけ!」

「ずいぶんと時間がかかったな」

「誰のせいだと!」

「あんたのエプロンが可愛かったのが悪い」

(そう言われると、つい喜んじゃうんだよなー)

「チョコレート刻む時がすごかった。

タッタッタッて、速かった」

「まあ、ごはん作るのも私の役割だし、包丁は慣れてるかな。

悠梓くんは料理とかしないの?」

「家庭科の調理実習くらいでしかしたことない」

「そっかー。

でも悠梓くんなら何でも器用にこなしちゃいそうだよね」

「いや、包丁は苦手だ」

「そうなの?」

「皮を向くと、ほとんど身が残らない」

「ぷっ」

私は思わず吹き出してしまった。

「おい、笑うな」

「ご、ごめん。

でも可愛いなって思って」

「嬉しくない」

「でも、安心したんだ」

なんでもそつなくこなしてしまう彼だけど

「ちゃんと苦手なこともあるんだね!」

「当たり前だろ」

(苦手なこと聞いたの、なんか初めてかも。

もっと悠梓くんのこといっぱい知っていきたいな)


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