声をくれた君に
一時間後。
「悠梓くん、プリン固まったよ!」
「早く食わせろ」
「はいはい」
私は悠梓くんの前に、プリンとスプーンを用意した。
「はい、どうぞ」
「ん」
だが、悠梓くんは一向に食べようとしない。
「悠梓くん、食べないの?」
「食わせろって言っただろ?」
「え、うん?
…あ、なるほど!」
(食べさせてくれって意味ね。
なんか今日は甘えたさんだな…
たまにはいいかも)
「じゃあ…
はい、悠梓くん、あーん」
「あ」
彼が無防備に口を開ける姿は、相変わらず可愛い。
「どう…ですか?」
私は悠梓くんの顔を覗き込んだ。
「…うまい、すげーうまい…!
はやく、二口目」
(気に入ってくれたんだ…よかった)
彼はそのままペロリと完食してくれた。
「ごちそうさま。
おいしかった、すごく。
口の中が幸せだった」
「ふふっ、よかった」
「来年もこれがいい」
「ほんと?
じゃあそうしようかな」
バレンタイン前の一週間前、一生懸命練習したチョコプリン。
(よかった、頑張ったの無駄じゃなかった!)