声をくれた君に


”佐野悠梓”

「…え?

同じ小学校?!」

そこには、なんとなく面影のあるような

けれど今の悠梓くんとは違って、気弱そうな男の子が写っていた。

『僕の将来の夢は、美容師になることです』

「あ、思い出した…」

私が思い出していたのは、小学校3年生の頃。

「私の将来の夢は、歌手になることです」

小学校の授業で、クラスのみんなの前で作文を読んだ。

その日の作文のテーマは将来の夢だった。

「私が歌手になりたいと思ったのは、歌うことが大好きだからです」

私は物心ついたころから歌うことが大好きで、いつも歌手になることを夢見ていた。

決して歌が上手なわけではない。

でも歌うことが大好きだった。

本当に、誰よりも大好きだった。

そして、私の次に作文を読んだのは

「じゃあ次は、佐野悠梓くん」

「はい…」

彼だった。

彼は自信なさげにみんなの前に立っていた。

「僕の将来の夢は…」

彼はそれだけ読んで、何も言わなくなった。

「佐野くん、どうしたの?」

彼は俯いたままだ。

「先生が代わりに読もうか?」

「だめ…」

彼はそのまま自分の席に戻ってしまった。

その授業のあとの休み時間、私は彼に話しかけた。

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