声をくれた君に


「思い出した?

俺ら、同じ小学校だったんだ。

あんた、全然気付かないから

いつ気づくか試してたんだけどな」

「だってあの頃の悠梓くんと、全然違うんだもん…」

背は低いし、声は高いし

無口でクールと言うよりか、ただの恥ずかしがり屋だった。

「まあ、あんたは成長しなかったってことだな」

(そ、そんな…)

「あの時、あんた俺に一曲歌ってくれただろ?」

「うん」

「あんた、全然音程合ってなくて」

「そ、そんなこと、自分でもわかってるよ…」

私は本当に歌が上手くなかった。

「でも、すげー綺麗な声だった」

「え…」

「透き通るような声。

俺はあんたの歌に夢中になった。

それにあの時のあんたの言葉、すげー胸に響いたんだ。

好きって気持ちだけで理由は十分だって」

(そっか、あの時の言葉、ちゃんと届いたんだ)

「俺は髪を切るのが好きだ、だから美容師になる。

今でもずっとそう思ってる。

だから俺はあの時

あんたの歌う声に、あんたの言葉に助けられたんだ。

夢を諦めずに済んだんだ。

あんたがお母さんを傷つけたって言う声は

俺を助けた優しい声だ」

「悠梓くんを助けた優しい声…」

考えてもみなかった。

私の声は、大事な人を傷つけただけの声だって思ってた。

でも私の声は

大事な人を助けた声だった。

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