声をくれた君に
体育の授業が終わり、全員で片づけをしていた。
「先生はちょっと会議があるから、お前らしっかり片づけて、倉庫もしっかり鍵かけとけよ」
はーい、とみんなののんきな声が体育館に響き渡る。
「それから佐野、ちょっと職員室来い」
「チッ」
佐野くんは小さく舌打ちをした。
「お前がサボるからだろー」
「佐野くんドンマイ」
クラスのみんなに茶化される佐野くんが可愛く見えた。
佐野くんの背中を見送っていると、目の前に小田さんが立った。
「じゃあ、残りの片づけ頼んだから。
ボール片づけてモップかけといてね」
そう言って小田さんは持っていたボールを私に押し付けた。
「みんな、櫻田さんが片づけ全部やってくれるってー」
「よっしゃ、じゃあ帰ろうぜー」
みんなが拾っていたボールを私の方に投げてさっさと帰っていく。
(はあ…
まあこれくらいならいっか)
今週はテスト週間で、放課後部活が行われることもない。
(のんびりやって帰ろう)
いつもより気楽に考えられるのは、さっきまで佐野くんが隣にいてくれたから。
(ちょっとのことくらいなら何でもないって思える)
みんなに片づけを押し付けられたはずなのに、ちょっとだけ楽しかった。