声をくれた君に
扉を叩くことに疲れ、私は一度冷静になった。
(南京錠だから中からは開けられない。
窓は人が通れるような大きさじゃないし、外に叫ぶための声もない。
携帯は教室に置いたままだし、家はひとり暮らしみたいなものだから誰も気づかない。
部活はないし、先生も完全に戸締り頼んでたから確認に来ることもないだろうし…)
ここから出る方法は何ひとつなかった。
ふと、困ったときにいつも助けてくれる彼の顔を思い浮かべてしまった。
(さすがに気づかないよね。
いつも授業が終わったら真っ直ぐ帰ってるみたいだし。
それに佐野くんはいつも私を助けようとしてるわけじゃなくて
彼の行動が結果的に私を助けてるだけなんだもん。
何を期待しようとしてたんだろう)
彼に助けられるたびに、私の中で彼の存在は大きくなっていく。
(誰にも助けられないことが当たり前だったんだから
佐野くんのこと考えてたりしちゃだめだ…)
私は佐野くんのことを考えるのをやめた。
(そもそもどうして小田さんはここまでするのかな。
いじめてるのはみんなだけど、彼女だけは特に度を越えているというか…
最初のころに比べてもだんだんエスカレートしてるような気もするし。
まあ、単純に私のことが嫌いなんだろうけど。
何か気に障るようなことしたのかな)
このクラスに転入して以来、いじめられる以外で小田さんに関わったことはない。
いつ気に障ったのか、私には心当たりがない。
(ていうか、いじめてくる相手を冷静に分析する私もどうかしてるよ)
私はひとり苦笑いした。