声をくれた君に
(もう、いいや、諦めよう。
彼女のところにいけるなら悪くないのかも)
私はその場に横になり、目を閉じた。
(なんか、こんな死に方、ダサいな…
でもいいや)
最後の最後に思ったのは、やっぱり彼のこと。
(佐野くん、好きだったよ)
私はそのまま意識を手放そうとした。
するとその瞬間、勢いよく扉が開く。
「おい、櫻田!大丈夫か?!
ばか、寝るな!
とりあえず救急車…」
私を怒鳴りつける声。
(佐野くん…なわけないよね。
佐野くんはこんな大声出したりしないし、もっと冷静だし。
夢でも見てるのかな?
もう、死んじゃったのかな)
「目閉じるな、とりあえずこれ着ろ」
何か温かいものに包まれたような気がした。
「これだけじゃだめか…
今あっためるから」
今度は何か重みを感じた。
(やっぱり、なんかあったかいかも…)
確かめたいけれど、まぶたが重くて目が開けられない。
「櫻田、絶対寝るなよ、寝たら死ぬぞ!
やばい、なんか目が覚める方法は…」
耳元で焦る声が聞こえる。
「くそ…こんなことしか思いつかない…
でも俺はあんたに死んで欲しくないから…許せ…」
その瞬間、唇に温かいものを感じた。
柔らかいそれは、なかなか離れようとしない。
(もしかして、これってキス…?)
だんだんと意識がはっきりしてくるような気がした。
重いまぶたを開けて見えたのは
大好きな人の顔だった。
(佐野くんだ…
本当に、私を助けてくれたんだ…)
私はその思考を最後に、意識を手放した。