音色
 あれから毎日、何度となく母に

「仕事、忙しいから」
「お母さんにも会いたいよ」
「ひとりでなんて」

とひたすら譲りまくったのだが、
「いい加減にしなさいっ!」
 一喝されて、今日という日を迎えたのだ。

 光を恨みたくなる。
「楢坂さんこそ」
 てきぱきと化粧直しをする多恵を見ながら、利香は意味深な笑みを浮かべる。

「何言ってるんですかー。これから数学の先生方と司書課で飲み会ですよ、飲み会」
 あっけらかんと告げられ、こちらが拍子抜けしてしまった。

「野々部先生もどうぞ、って言いたいところですけど、邪魔しちゃ悪いですからね」
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