音色
 圧倒されていた。

 周囲が席を立って出口に向かっている中、ひとり、立ち上がることも出来ず誰もいなくなったステージ上を見つめるだけだった。

 光は勿論良かった。
 押せ押せオーラ全開で10年近く疾走していたあの頃は、楽しい筈なのになんとなく刺々しさが目立って帰る頃には疲れてしまっていたのだが、今日のピアノはそんなことをまったく感じさせない心地よさがあった。

 ときに激しく、荒々しく。また、ときには優しく、軽やかに。
 ひとりよがりの演奏はまったくなかった。
 寧ろ、控えめなくらい。

 そう感じてしまうのは、あのヴァイオリンの力が凄まじいものだったから。
< 18 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop